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「創造都市の創造と市民社会の新たな展開」塩沢担当分各回紹介

これは大阪市立大学インターネット講座の2005年度講義として、創造都市研究科が担当しているもののうち、塩沢由典が分担執筆した3回分の全文を掲載・紹介するものです。他の先生方の担当分を含めての全体像は、
こちらをこらんください。
第3回 経済の大きな変化とスモール・ビジネス
第4回 町おこし・地域おこしの考え方/「新しい政策」概念
第5回 扇町創造村構想
第3回 経済の大きな変化とスモール・ビジネス
産業構造(産業構成)は、どんな仕事で人々が食べているかを示す重要な統計です。この講義では、日本と世界各国における20世紀の産業構造の大きな変化を概観したあと、21世紀の産業構造の動向を予想します。第3次産業就業者の比率が増えていくのは確実ですが、その内容が問題です。個人の創造性が競争優位の核となる創造産業と呼ばれる一群の産業の拡大が期待されます。このような経済活動を担う組織のあり方も、今後大きく変わると予想されます。20世紀は大企業の時代でしたが、21世紀には大企業にならなんでスモール・ビジネスがもっと活躍するようになるでしょう。

本文中では、単に統計上の動向を延長して予想するだけでなく、なぜそのような傾向が持続し、今後もそれが強化されるようになるか、いくらか理論的な考察も加えました。第1次産業・第2次産業の就業者比率が低下し、第3次産業の就業者数比率が高まる傾向はぺテイ・クラークの法則(Petty-Clark's Law)と呼ばれていますが、なぜそうなるのかの理論的説明はあまり見かけません。第2節で、この法則の成立する理由について簡単に説明しました。第4節では、情報通信技術(ICT)の発展が、組織の今後のあり方にどのような影響を与えるかに付いても解説しました。

第4回 町おこし・地域おこしの考え方/「新しい政策」概念
経済を持続的に発展させていくには、地域はその産業構造を不断に変えていく能力=地域のインキュベーション能力を持たねばならない。これは地域にすむすべへての人の課題である。地方政府が税金を用いて行う施策のみを「政策」と考えてはならない。地域のひとびとが力を合わせれば、政府の施策としてできないことで実現可能なことはいろいろある。21世紀の町おこし・地域おこしは、このような新しい政策概念をもちなくてはならない。

「政策」概念の転換とともに「政策の担い手」の概念も変わらなければならない。政策の主体は政府や政党ではなく、町おこし・地域おこしを主導する個人あるいは個人のグループである。このような政策の担い手は魅力的な町おこしに成功した地域にはかならず存在する。

第5回 扇町創造村構想について
第3回講義では、今後の産業構造について考えました。製造業に従事する人口はますます小さくなるであろうこと、第三次産業が分化していかざるを得ないこと、今後は知識産業、創造産業、あるいは時間充実産業とでも呼ぶべき産業に従事する人口の比率が増えて行かざるを得ないことなどを確認しました。第4回講義では、地域のインキュベーション能力を高める必要があること、その主要な担い手が町おこし・地域おこしの主役・脇役であり、彼らが政策の担い手とかんがえられるような政策の新しい概念が必要であることを論じました。わたしの講義は第5回で最後となりますが、第5回講義では、先の2回の講義て提唱したことを実際に実現するために、ひとつの具体的な事例を紹介させていただきます。紹介といっても、まだ始まったばかりで、実績としてはこれからのものです。

創造都市研究科では、「創造都市を創造する」を研究科の重点研究の目標に掲げています。これは単なる調査研究ではなく、社会実験型の研究であるということを標榜しています。地域の課題を設定し、その目標を達成するために、目標達成の動きに参加する中から、創造都市を創造するために必要な問題と知見を獲得しようとするものです。扇町創造村は、そうした社会実験の一つとしてわたしが取り組んでいるものです。




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