インターネット講座2005「創造都市の創造と市民社会の新たな展開」3
各回紹介

経済の大きな変化とスモール・ビジネス

塩沢由典
1. どんな仕事をして生きていくか
2. 産業構成の長期変化
3. 第3次産業の動向と創造産業
4. スモール・ビジネスの可能性

佐々木先生の総論に続いて、3回の講義を受け持たせてもらいます。第1回は、産業構成の大きな変化とスモール・ビジネスの可能性、第2回目は地域おこしの考え方とそこにおけるスモール・ビジネスの役割、第3回目は、わたし自身が提唱している「扇町創造村」についてのお話です。

佐々木先生の講義が「創造都市論」の系譜と現在の動きを伝えるものであったのに対し、わたしの第1回目の講義は、経済の大きな流れの中で、なぜ創造産業という考えが必要となってきているのか、その背景を探るものとなります。


1.どんな仕事をして生きていくか

いまはNIETなどといって、職業をもつでもなく、教育や訓練を受けるでもない人が増えているようですが、人の世話にならずに生きていくには、収入を確保する必要があります。そのためには、よほどのお金持ち以外には、なんらかの職業をもたなければなりません。

現代社会には、じつにいろいろな仕事=職業があります。日本標準職業分類(1997年改定)をみますと、約450種類の職業が掲げられています。それでも、アニメ制作やマンガ家、声優などといういま人気の職業が載っているわけではありません。職業はどんどん変わり、官庁で統計作成用に作っている分類は常に古くなっている可能性が高いのです。

職業分類のほかに、標準産業分類があります。これは2002年3月に改定され、同年10月の調査から適用されています[第11回改定]。大分類に新しく「情報通信業」が立てられたことが一番大きな改定事項です。産業とは、「事業所において社会的な分業として行われる財貨及びサービスの生産又は提供に係るすべての経済活動」をいい、それらを事業所で生産されたり提供されたりする財貨やサービスに注目して分類します。大分類が19、中分類が97、小分類が420、細分類が1269などに分類されています。

標準商品分類というものもあって、こちらはもっと細かく、細分類で11,400、6桁分類では13,757の商品が掲載されています。ひとつの会社でも、多数の商品を生産・販売しているのが普通ですから、産業分類より商品分類がずっと多いというのは当然でしょう。ただし、これでも商品を特定するほど詳しいものではありません。あくまでも商品群を定めるものです。

産業分類は、職業分類とは別の意味で重要なものです。たとえば、あなたがある会社の「営業職」にあるとすれば、あなたの職業は「281営業・販売事務員」ということになります。しかし、営業の仕事なら、どんな商品でも扱えるかというと、そうではありません。共通の能力もあれば、商品ごとに異なる知識もありますし、顧客も違ってきます。どんな商品を売るどんな会社かということで、仕事の将来性や安定度が大きく違ってきます。

社会における産業構成は、常に変化しています。ある産業が今どんな状況にあり、今後どうなっていくかを推測することは、職業選択を考えとき、企業の戦略を考えるとき重要な視点を提供してくれます。

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2.産業構成の大きな変化

小分類、細分類で、その産業が今後どうなっていくか推測するためには、個々の産業の過去と現状をよく調べなければなにもいえません。しかし、大きな分類についてはかなりはっきりした長期の傾向があります。

産業分類で、もっとも大きな分類としてしばしば使われるのが、第1次・第2次・第3次という産業分類です。これは英語などではsector(セクター)といい、産業よりも大きな概念として捉えられています。大分類では、農業、林業、漁業が第1次産業に、鉱業、建設業、製造業が第2次産業に、それ以外が(分類不能の産業を除いて)すべて第3次産業に属すとされています。

産業3分類で有名なのは、ぺティ=クラークの法則です。ウィリアム・ぺティとコーリン・クラークの二人が発見した法則という意味でこう名づけられていますが、ぺティは17世紀の人、クラークは20世紀の人で時代がだいぶ違います。法則は、どの国でも経済の発展初期には第1次産業の人口比が高いが、経済が発展するにつれて第2次産業の人口比が増え、さらに発展すると今度は第3次産業が増大するというものです。

表1 就業者数構成比
192019301940195019601970198019902000
第1次産業53.849.744.348.532.719.310.97.15.0
第2次産業20.520.326.021.829.134.033.633.329.5
第3次産業23.729.829.029.638.246.655.459.064.3
出所:総務省統計局「国勢調査結果の時系列データ」第9表産業(大分類),男女別15歳以上就業者数−全国(大正9年〜平成12年)より作成。

日本でもこの法則がよく当てはまります。最初の国政調査の行われた1920年には、第1次産業に従事する人は53.8パーセントもありました。2000年の調査では、5パーセントと就業人口に占める比率は10分の1に落ちています。第2次産業は、1920年に20.5パーセント、最高時の1975年には34.1パーセント、2000年には29.5パーセントへと落ち始めています。もっとも、就業人口総数の変化があるので、第2次産業の就業者数が最大になるのは1995年、2055万人が第2次産業で働いていました。他方、第3次産業は、1920年の23.7パーセントからほぼ単調に増大して2000年には64.3パーセントとなっています。

このような各産業への就業人口の比率の変化は、将来、どんな産業で働くか、どんなビジネスが伸びるかを考える上で、重要な考察材料になります。どんな産業であれ、ひとりの人間が働くことはでき、新しいビジネス・チャンスもあるのですが、全体としてみるとき、今後どんな産業が伸びていくかは、かなり法則的に決まっています。就職を考えるときは、今後伸びる産業でまだあまり人気のない仕事を目指すと、比較的容易に自分の夢をかなえることができます。

ぺティ=クラークの法則は、なぜ成り立つのでしょうか。第1次産業の大部分は農業です。ときどきある誤解なのですが、農業人口と農業従事者の比率が劇的に減ったのは、農業が遅れているからではありません。事実は反対です。農業の生産力が急激に増大したために、より少ない農業従事者で必要な食料が確保できるようになったからです。

輸出も輸入もしていない国を仮想的に考えてみましょう。この国では人口の半分の人が働いているとします。ひとりの農民が4人分の食料を生産できるとき、就業人口の半分は農業に従事しなければなりません。この国の人口を100人とすれば、就業人口は50人、農業で25人が働いて食料を充足させることができます。しかし、もし生産力が増加してひとりで50人分の食料を生産できるようになれば、50人のうち2人、つまり4パーセントの人が農業に従事すれば十分です。

日本は、食料はともかく飼料などの形で多量の食糧を輸入しています。その意味では、上の仮想例では考えにくいところがありますが、フランスやアメリカ合衆国のような食糧輸出国でも農業人口は非常に小さくなってきています。

第2次産業の大部分は製造業です。製造業についても、農業と同様のことがいえます。いま仮に一人の人が需要する工業製品が一定であるとすると、人口と就業率が一定ならば、製造業人口は生産性に逆比例して減少することになります。

農業より製造業の方が難しいのは、一人の人が必要とする工業製品の量が食糧ほどには決まっていないことにあります。一人が食べられる食料には、おのずと制限があります。昔と違って今は、過食、肥満、栄養過多が問題視されています。これに対し、工業製品への需要がどの程度で飽和するかを見極めるのはなかなか難しいことです。新しい製品が現れると、いままで欲しくなかった製品が買いたくなります。しかし、他方では、日本の家庭にはもはや家に置けないほどの家具、什器、家電製品、装飾品にあふれています。モノに対する欲望が飽和しつつあるといってもよいでしょう。

需要が飽和すると、あとは限られた市場の取り合いになります。生産性を高めてより安価に売ろうとすれば、経済全体では製造業で働ける人口は減ってきます。製造業就業者数は、1990年まで絶対数で増え続けてきましたが、相対比率でいうとすでに1970年の26.1パーセントが最高で、その後、減少に転じています。絶対数でも1990年のピークから10年間で240万人、16パーセント減少しています。

輸出・輸入を考えると、事情はすこし複雑になりますが、結論はあまり変わりません。かつてのように日本の所得水準が低く、安い労働力で安くものを作って先進国に輸出していた場合には、日本国内では消化できない量の生産を行い、多数の雇用を創出することが可能でした。輸出先国からは「失業の輸出」と非難されました。しかし、現在は、日本は世界最高水準の所得の国で、アジア諸国から追い上げられる立場です。アジア諸国と競合する製品では、輸出するためにも、生産性を上げざるを得ません。製品輸出が2倍になっても、生産性が2倍になっていれば、輸出向けに国内で雇用できる人数は増えません。生産性があがったのに、輸出はあまり増えなかったという場合には、貿易のない場合と同じく、生産性の伸びに伴う価格低下が国内需要を伸ばさない限り、雇用は減ってしまいます。

世間では「ものつくりが大切だ」という発言がよく聞かれます。その意見は正しいのですが、ものつくりで食べられる人口(つまり製造業就業者)が減っていくことには注意しておかねばなりません。では、今後、どんな産業で食べていくことになるのでしょうか。第1次産業は、もっとさがるでしょう。第2次産業では、建設業は就業者数でも比率でも1995年まで増加し続けてきました。建設業の就業者比率は、日本は世界でも例外的な高さとなっています。今後は製造業と同じように減少していくと考えられます。第2次産業の30パーセントという数値は今後低下せざるを得ません。そうすると残り65パーセント以上は、すべて第3次産業ということになります。

ただ、第3次産業の内容はきわめて多様です。次に第3次産業の今後について考えてみましょう。

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3.第3次産業の動向と創造産業

2000年の国勢調査結果によると、第3次産業の就業者数は、構成比率で61.8パーセントあります。内訳をみると、大きなものは卸売・小売業・飲食店の22.8パーセントとサービス業の24.8パーセントです。この二つで47.6パーセントとなります。働く人のほぼ半数が卸売・小売業・飲食店かサービス業で働いていることになります。

第3次産業が経済の主要構成部分であるという傾向は、先進国では一般的なものです。表はアメリカ合衆国とヨーロッパの3カ国の産業別就業人口の構成比を示したものです。ヨーロッパと日本、合衆国とで分類体系がことなりますが、比較可能な形に整理したものです。

表2 産業別就業者の構成比
2002年製造業小売など金融など社会・個人サービスなど
ドイツ23.217.312.216.3
イタリア22.619.910.710.5
日本19.3a22.710.125.6
イギリス15.619.516.016.3
合衆国13.320.612.236.8

出所:総務省統計局『世界の統計』2005、12−3産業別就業者数より作成。
注:「小売など」:卸・小売、修理、ホテル・レストラン。「金融など」:金融仲介業、不動産業、物品賃貸業、事業サービス。「社会・個人サービスなど」:保健衛生、社会事業、その他の社会・個人サービス。a 日本の分類では、ホテル・レストランは「小売など」ではなく「社会・個人サービス」に含まれる。

上の「小売など」と「社会・個人サービスなど」を合わせると、イタリア30.4パーセント、ドイツ33.6パーセント、イギリス35.8パーセント、日本48.3パーセント、アメリカ合衆国57.4パーセントとなっています。卸・小売・ホテル・レストランなどは各国20パーセント前後、金融はイギリスを除いて10パーセント強ですが、保健衛生、社会事業、その他の社会・個人サービスで働く人口は、かなりの差があります。

わかる限りで各国の金融仲介業、不動産、物品賃貸業、事業サービス[対事業所サービス]の総計比率をみるとイギリスの16パーセントに並ぶのはオランダとオーストラリアの2カ国のみで、それ以外は先進国で10から12パーセント、途上国では2から5パーセントぐらいの間にあります。卸・小売、自動車家庭用品修理の比率には、あまり大きな差がありません。新国際分類体系で結果のある比較的大きな国22カ国のうち、14パーセントから18パーセントの間に15カ国が収まりました。18パーセントを超えたのは、ペルー、メキシコ、オーストラリア、アルゼンチンの4カ国、13パーセント以下だったのはルーマニア、フィンランド、エジプトの3カ国でした。

大分類では明確な傾向は掴みにくいのですが、ヨーロッパ系の先進国では保健衛生・社会事業が、アメリカと日本ではその他の社会・個人サービスが比較的高い比率となっています。

以上の観察などから、小売などの流通業の雇用吸収力は、もはやかなり限定されてきていると見てよいでしょう。ホテル・レストランなどは、国により大きな違いがあり、まだたまだ伸びる業種といえるかもしれません。

産業分類体系そのものが新しい事態に十分対応しきれていないという事情もあります。2002年改定の日本標準産業分類では、大分類として「H情報通信業」が新たに設けられました。出版と新聞は、これまで「印刷・印刷・同関連産業」として製造業に含められていました。これからは、放送や映画と同じく情報通信業のなかの「映像・音声・文字情報制作業」に含まれることになります。

大きな流れからいうと、ものの生産から、教育・医療・サービス・コンテンツなどがより大きな比重をもつ社会へと変化していくことになるでしょう。健康で楽しく文化的に暮らすための仕事が増えていくといってもよいでしょう。このような傾向は、図1からもうかがえます。図のなかの「娯楽業」は、映画館などの施設数が減少していることを意味しています。


図1 サービス業の事業数の増減


出所:経済産業省『中小企業白書2005年』第2部第2−1−15図

次第に豊かになるにつれて、モノに対する需要は次第に飽和しつつあり、生活時間をより健康で楽しいもの、充実したものにするためのさまざまなサービスが今後ますます増えてくると考えられます。

このような産業はすべて第3次産業に入りますが、第3次産業には、G電気・ガス・熱供給・水道業、I運輸業のように社会経済の経済基盤を支えるものが含まれています。N医療・福祉とR公務もここに含めてよいでしょう。これらは社会基盤産業です。

Hの情報通信業のうち、通信業は自分で情報を生み出すのではなく、情報交換の基盤を支えています。これに対し、J卸売・小売業、K金融・保険業、L不動産業は、広義の交換取引を主要な業務とする産業です。これらを流通媒介産業といっておきましょう。

これらに対し、M飲食店・宿泊業、O教育・学習支援業、Qサービス業などは、古代からあった産業でありながら、近年急速に比重を増加させている産業です。この中には、H情報通信業のうち、放送業、情報サービス業、インターネット付随サービス業、映像・音声・文字情報制作業なども、その文化的性格からここに分類してもよいでしょう。これらをまとめて、知識産業あるいは時間充実産業と呼んでおきましょう。

第3次産業は、どれも大切なものですが、流通媒介産業にはあるていど飽和状況がみられます。社会基盤産業のうち、医療・福祉は、今後も増大していく部門と考えられます。今後、発展が期待されるのは第3次産業の中の第3分類、すなわち飲食店・宿泊業、教育・学習支援業とサービス業(および情報通信業の一部)でしょう。サービス業の中には、弁護士や会計士、デザイナー、著述業、芸術家、学術研究、研究開発など専門プロフェッショナルの仕事が含まれます。コック、理容・美容、エステ、フィットネス、旅行コンダクタなど直接人に接するサービスのプロもここに入ります。

これらの職業についている人たちを、リチャード・フロリダは創造階級と呼んでいます。彼の推定によると、アメリカ合衆国の場合、創造階級は1900年の290万人、10.0パーセントから1999年の3829万人、30.1パーセントに増大しているという。別の人たちは、上記の産業の核に創造活動があるとして、それらを創造産業と呼んでいます。これは産業分類上、厳密に定義されたものではありません。しかし、今後、おおいに注目すべき産業概念と考えられます。

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4.スモールビジネスの可能性

これまで主として20世紀経済の大きな流れを見てきました。産業構造としては、第1次産業就業者が減少し、第2次産業も多くの先進国で減少が始まっています。第3次産業は構成が複雑ですが、今後、健康・文化産業の比重が高まっていくでしょう。

産業構造の大きな変化は、事業の組織形態にも大きな変化をもたらします。わたしたちはいま21世紀に生きていますが、まだまだ20世紀の常識にとらわれています。20世紀が特異な世紀であったのに、その常識が21世紀にも通用すると考えている人が大部分です。

20世紀の特異性のひとつに巨大組織があります。19世紀の中ごろには、100人を超える事業所は珍しいものでした。ところが、鉄道や電信・電話の発達、会計制度の整備などによって、雇用者数1万人を超える企業が経営可能なりました。19世紀の最後の四半世紀には、西ヨーロッパでも、北アメリカでも、企業合同・企業合併の大きな波が押し寄せ、多くの産業が寡占状態になりました。1901年には、日本にも1万人を超える企業が二つありました(二つとも鉄道会社でした)。

19世紀の始めには存在しなかった巨大企業が20世紀を支配しました。20世紀は巨大企業の時代でした。20世紀の半ばには、アメリカ合衆国では大企業500社を合わせると、合衆国の全資産の40パーセント以上を支配していたといわれます。

産業革命に遅れて参入した日本も、次々と巨大企業を生み出し、欧米の後を追いかけました。大企業は、巨大資本を生かして最新鋭の設備を備え、高度な教育を受けた技術者を雇用して、高い生産性を実現しました。従業員の給与水準には30パーセント以上といわれる格差がありました。発注・納入関係にあっても、ほぼ独占的な買手の地位にある大企業は、中小の部品・中間品納入者に対して優位な立場に立ちました。

こうした事情を背景に、大企業は次第に終身雇用・年功序列型の職位と賃金制度とを確率し、戦争直後の一時期がすぎると労使協調型の産業関係を確立され、これらは日本的経営の骨格と言われました。就職するなら、大企業に、そのためにはよい大学、よい学校にと多くの人が考え、受験戦争の背景をつくり出しました。しかし、こうした慣行が20世紀の特異な状況の中で成立したものであることを忘れてはいけません。

20世紀には組織が大きいことはさまざまな側面で有利でした。IT革命(情報技術革命)がその状況をひっくりかえしました。

組織がなぜ作られるのか。この問題について経済学的な考察をしたコースは、取引費用が節約できるからだと考えました(コースはこの研究などノーベル賞をもらっています)。取引費用の重要な構成要素に情報通信費用があります。インターネットとディジタル通信の発達によって、通信に係る費用と時間および情報を獲得する費用が劇的に低下しました。情報獲得と処理に使われる一番大きな負担は、現在では、読み取り思考する時間となっています。そうなると、大企業を組織して情報伝達費用を節約することが大きな有利さではなくなります。

他方、社会が豊かになると、商品やサービスにはより深い創造性や芸術性が求められるようになります。組織で制作するよりも、個人の才能がより大きな意味をもつ場面が増えてきます。個人の才能を発揮させるには、個人と彼/彼女を助ける少数のチームによるプロダクション方式がより適しています。もちろん、プロモーションやコーディネーションの必要は残りますが、その業務自体がかなり個人の能力と人脈に依存するものになります。そうなると企業という硬い組織形態をとるよりも、ゆるい連携によって仕事する方がよい仕事が効率的にできるようになります。仕事の内容によってその都度より適切な組み合わせを作り出せばよいからです。

大きな組織には、管理費用の増大、動機付けの難しさなど、小組織の持たない難点をもっています。しかし、これまでは情報費用の節約やさまざまな場面での規模の利益などによって、小さな企業に対し圧倒的な優位性を発揮してきました。経済活動はさまざまで、おかれている条件が多様ですから、すべての業種で一挙に企業の有利さが崩れるとはいえません。しかし、情報技術の進展は、大組織であることの優位さのかなりの部分を突き崩してしまいました。そこに創造性・芸術性の要求が加わると、個人を中心とする少数のチームが大組織を凌駕する可能性が高まります。これをスモール・ビジネスと呼ぶとすると、これまでと違ってスモール・ビジネスがビッグ・ビジネス(大企業)にはない優位性をもつ時代になってきています。逆にいえば、ビッグ・ビジネスがスモール・ビジネスを圧倒する優位さを失いつつあります。

日本経済の今後を考えるとき、マクロに見ると創造産業を伸ばしていくことが課題になります。その創造産業を担うのは、20世紀型の巨大企業ではなく、プロダクション方式を典型とする多くのスモール・ビジネスである。踏み込んだ予想をすれば、こういえるのではないでしょうか。こういう時代理解のもとに、次回は地域を活性化する問題について考えてみましょう。

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