塩沢由典>講演要旨>都市経済調査会講演

講演要旨


大阪:都市再生の課題

大阪都市経済調査会 2002年7月19日
大阪産業創造館



大阪:都市再生の課題・講演要旨

塩沢由典(大阪市立大学大学院教授)

(1)都市再生とはなにか

○いま、「都市再生」が叫ばれている理由
  公共投資の振り向け先の変化であってはならない。

○都市が本来持っていた機能
  J.Jacobs(都市計画批評家・思想家)『都市の経済学』
  都市は、知識・文化・商業ばかりでなく、工業・農業の温室であった。

○都市の創造的な機能を再構築する運動
  関西をベンチャーが叢生する地域とする。
  大阪市立大学創造都市研究科(2003年開設・大綱は別紙参照)

(2)関西にとっての都市再生

○関西は、世界にもまれにみる創造的な都市地域
  日本文化のふるさと
  飛鳥・難波時代からの文化的蓄積
  上方芸能の発祥の地
  現代芸術家を輩出

○先進的産業の誕生地
  江戸時代 綿花・油・工芸品
  明治時代 綿工業(東洋のマンチェスター)
  戦  後 家電産業 Cf.戦後の新業態75中45までが関西発
  現  在 液晶、バイオ、ゲーム、再生医療、など

○現在の問題
  関西・大阪の地盤沈下(経済・文化)
    証券市場(シカゴと大阪)、国際金融機能の喪失、失業率
  自前文化の喪失
    OMS、近鉄劇場、オリエンタル劇場などが廃止、中座の売却
  人材の供給地域 
    情報工学者・デザイナー 修士卒業後、東京・横浜へ

(3)なにが必要か

○世界の都市圏競争で生き残れる地域になる
  研究開発・ベンチャー叢生・生活文化の発信・住んでみたい/見てみたい都市
  これらは一体のもの/個別の施策では不十分

○知的中心性を取り戻す
  関西から新しい知識・芸術・製品・流行・生活スタイルが生み出される。
  それが日本ばかりでなく、世界各地から注目されるようになる。

○関西の構造的欠陥
  地域内の情報循環が希薄
    域内メディア 新聞・テレビ(準キー局、CATV)・雑誌
  編集者がいない=先端情報の媒介者がいない。
    人材の売り込み機能がない=>人材流出

(4)では、どうすべきか

○大きなそろばんを弾け
  ファッション・ビジネス 
    大阪=繊維の町 ファッション誌を持たない 映像の発信力なし
    大阪市内卸売り(衣服・身回品)3兆5千万円×5%=175十億円
  ファッション・ショウ(大阪コレクション)
    社会の文化とする努力が欠けている。 Cf:『芦屋夫人』

○五代友厚方式の提唱
  行政・経済団体に頼るな
    ITなど急速な変化の時代に合わない。
  やれる人がやる
    五代友厚(薩摩の政商/商工会議所・証券取引所・商法講習所・他)
    五代は、当時の最先端の社会技術の導入者だった。
  自立できる仕組みを考える。
    税金でやっているかきり、量に問題がある。
    採算の取れる仕組み、NPO

○都市政策の思想転換(創造都市研究科都市政策専攻の狙い)
    @都市の創造的機能を取り戻す、オピニオン・リーダーの育成
    A行政評価に基づく行政改革
    B行政とNPOの新しい関係構築

○大阪の町再生の重点課題
  @架線の地下ケーブル化
  Aエディターズ・ハウス、先端芸術館(既存の建物の用途転換でよい)
     街づくりとの連携(長堀、堀江、老松町、福島、帝国通り)
  B人材育成機能の都心集積(社会人大学院・芸術系大学)

(5)より大きな課題

○失われた10年の意味
  不良債権問題(インフレ・ターゲット論)に矮小化してはならない。
  「トップラナーになったが、後追い体制から抜け出せない」という問題

○思想の改革が必要
  企業経営・行政改革・人事・教育・研究(大学)などすべての側面
  これまで主流でなかった領域(スポーツ・音楽・美術)が世界に進出している。

○21世紀の経済
  IT革命の進行=>大企業時代が乗り越えられる。
  イタリア・京都式独立自営業の復活

○経済学も変わる
  現在は、新古典派(マークT:1870-1970、マークU:1975-現在)
  進化経済学・複雑系経済学




もどる

トップ・ページ   講演一覧   ページ・トップ