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大阪科学技術センター・第49回ベイエリアフォーラム 

関西圏における都市再生の課題

2004.3.24 
大阪市立大学大学院創造都市研究科長・教授
塩 沢 由 典 

(1)「都市再生」とは何か

○小泉内閣の「都市再生」
首相官邸・都市再生本部
  2001年5月8日設置 2002年6月1日都市再生特別措置法
都市再生基本方針(=>参考資料1)
  都市再生の意義 都市=>21世紀の活力の源泉 =>経済再生の実現につながる。
  都市再生は、経済再生・経済活性化でなければならない。
 ☆実際には「都市開発」「災害対策」「土地利用転換」などに焦点が絞られている。
 ☆公共投資の振り向け先の変化であってはならない。

○都市の創造的な機能を再構築する運動
都市が本来持っていた機能
  J.Jacobs(都市計画批評家・思想家)『都市の経済学』
都市は、知識・文化・商業ばかりでなく、工業・農業の温室であった。

(2)関西の問題

○関西・大阪の地盤沈下(経済・文化)
証券市場(シカゴと大阪)、国際金融機能の喪失、失業率(=>参考資料2)
自前文化の喪失
  OMS、近鉄劇場、オリエンタル劇場などが廃止、中座の売却
人材の供給地域
  情報工学者・デザイナー 修士卒業後、東京・横浜へ

○関西は、世界にもまれにみる創造的な都市地域
日本文化のふるさと
上方芸能の発祥の地
現代芸術家を輩出

○先進的産業の誕生地
江戸時代 綿花・油・工芸品
明治時代 綿工業(東洋のマンチェスター)
戦  後 家電産業 Cf.戦後の新業態75中45までが関西発
現  在 液晶、バイオ、ゲーム、再生医療、など

○関西をベンチャーが叢生する地域とする。
潜在の能力はある。


(3)なにが必要か

○関西の構造的欠陥
地域内の情報循環が希薄
  域内メディア 新聞・テレビ(準キー局、CATV)・雑誌
編集者がいない=先端情報の媒介者がいない。
編集者の数 東京は大阪の10倍以上(人口は2倍)
  人材の売り込み機能がない=>人材流出

○世界の都市圏競争で生き残れる地域になる
研究開発、ベンチャー叢生、生活文化の発信、住んでみたい・見てみたい都市
  これらは一体のもの、個別の施策では不十分
知的中心性を取り戻す
  関西から新しい知識・芸術・製品・流行・生活スタイルが生み出される。
  それが日本ばかりでなく、世界各地から注目されるようになる。

○頭脳機能を作りだす
創造都市研究科
  社会人研究科 学生=>問題意識と経験からの知識
  学生と教員が協力して、新しい知識を作りだす。
議題設定ができる
  記者が4人=>昨日の記事を講義で話題に=>身近な事実の意義=>社会的確認
  短い回路の情報流通(全国発信にのみ気を取られてはならない。)


(4)では、どうすべきか

○大きなそろばんを弾け
ファッション・ビジネス 
  大阪=繊維の町 ファッション誌を持たない 映像の発信力なし
  大阪市内卸売り(衣服・身回品)3兆5千万円×5%=175十億円
ファッション・ショウ(大阪コレクション)
  社会の文化とする努力が欠けている。 Cf:『芦屋夫人』
  編集者の少ない街が自分たちの損を作りだしている。

○五代友厚方式の提唱
行政・経済団体に頼るな
  ITなど急速な変化の時代に合わない。
やれる人がやる
  五代友厚(薩摩の政商、商法会議所・株式取引所・商業講習所=>1880年)
  五代は、当時の最先端の社会技術の導入者だった。

○先端地場産業を創出する
例:液晶表示装置LCD 
  関西の先端地場産業
  シャープ以外にも多くの企業が従事
企業間の開発競争
  企業秘密:これが企業の最適な政策か?
  世界競争の時代=>世界各地で開発=>1年早く開発できれば、地場産業化
技術の3段階
  競争前段階/競争段階/競争後段階
  競争前段階での協力=>他地域より一歩先んずる。 
  オムロン・市原達朗副社長(研究開発に関する情報公開)


(5)政策概念の思想転換

○「政策」概念の拡大
旧来の「政策」概念 政府・政党などが実行するもの
新しい「政策」概念 政策とは、社会の多くの人々の追求目標として共通に保持されるこ  とにより、社会の発展に寄与する理念をいう。

○自立できる仕組みを考える。
税金でやっているかきり、量に問題がある。
採算の取れる仕組み、NPO

○創造都市研究科「ベンチャー経済論」(塩沢担当)での課題
自分が実現したいと考えている政策課題を一つ挙げ、それを中央政府・地方政府の施策としてではなく、株式会社の活動によって実現するビジネス・プランを書いてください。

○関西ベンチャー学会
  日本ベンチャー学会設立大会でのショック
  清成会長:ベンチャー学会の二つの柱 @研究とA運動
  学者の責任(批判だけでは済まされない。=>3年掛けて設立)


(6)地域の頭脳機能・神経機能

○地域の議題設定能力を育てる
  「地方分権」に必要なこと
  日本の情報構造(東京中心、特にテレビ・雑誌)

○オピニオン・リーダーの重要性
  政策を政策とするために
  オピニオン・リーダーの育成=>創造都市研究科都市経済政策研究分野
    育成目標:「地域経済活性化のオピニオン・リーダーを育成する」

○地域のメディアと小さなサイクル
  議題が東京に行って戻ってくる?
  小さな情報サイクルが重要

○大学の役割
  地域の発展に必要な知識創造と人材の養成(中世から変わらないもの)


(7)扇町創造村(仮称)構想

○名称 扇町創造村 あるいは 天満芸術村(天満芸術組)など

○地域 天神橋筋・天満・梅田・中津を結ぶ4角形周辺

○目的
・21世紀を先導する産業のインキュベータ機能を創出する。 
・クリエータ・編集者などに活動の機会を演出し、仕事への需要を創出する。
・全国から若いクリエータなどが集まる町にする。
・ここで生まれる新しい傾向がアジアや世界に発信されるものとする。

○方法 
・共同の運動を盛り上げることににより、ある種のメッカとしての地位と注目度とを形成する。
・仕事機会と新人紹介・発掘機能を高める。
・この地域には、すでにこうした方向への動きがある。運動は、これにまとまったコンセプトを与えることである。

○現在の状態
・クリエータ系インキュベータ メビック扇町、ピエロハーバー(予定)
・芸術系専門学校 「北区の芸術系学校」 北区に14校以上
・画廊 梅田周辺 22店 西天満・老松通り 28店
・『天満人』(創刊号、第2号)の販売部数
・扇町Talkin' About 哲学カフェ 扇町ミュージアムスクウェアの遺産
・大きな画材屋さん:「ガクブチの大和」(天神橋筋4丁目)
・毎日放送、関西TV、読売新聞などの存在




[参考資料1]

都市再生基本方針(抜粋)

    http://www.kantei.go.jp/jp/singi/tosisaisei/kettei/020719kihon.html
第一
 1都市再生の意義 都市=>21世紀の活力の源泉 =>経済再生の実現につながる。
第二
 2 都市再生施策の対象地域
 ア 我が国の経済の牽引役となる東京圏、大阪圏など大都市圏が国際的にみて地盤沈下していることから、この大都市圏を、豊かで快適な、かつ、経済活力に満ちあふれた都市に再生することに取り組む。
 3 都市再生施策の重点分野
 ア 活力ある都市活動の確保
 イ 多様で活発な交流と経済活動の実現

(別添1) 都市再生施策の重点分野
1 活力のある都市活動の確保
○IT等を活用した交通渋滞・交通事故対策
○ボトルネック踏切、渋滞ポイント解消
○民間投資誘発効果が高い都市計画道路等の優先整備
○通勤・通学混雑解消
○国際物流機能の強化など物流の効率化・円滑化 等

2 多様で活発な交流と経済活動の実現
○国際交流機能の強化や都市観光の推進
○ITなど将来成長産業の育成
○地域に密着した商業をはじめとする都市型の産業の活性化
○大学など高等教育機関等と各種都市機能の連携・一体化 等


[参考資料2]

完全失業率 (実数 %) 総務省労働力調査 2004.1.31 発表

   北海道 東北 南関東 北関甲 北陸 東海 近畿 中国 四国 九州
1999年 4.9 4.2 5.1 3.6 3.5 3.9 5.6 3.9 4.1 5.0
2000年 5.5 4.4 4.8 3.8 3.6 3.7 5.9 3.9 4.1 5.4
2001年 5.9 5.0 4.9 4.1 3.9 4.1 6.3 4.2 5.1 5.6
2002年 6.0 5.9 5.4 4.4 4.0 4.1 6.7 4.3 5.2 6.1
2003年 6.7 5.6 5.1 4.6 4.0 4.0 6.6 4.3 4.8 5.9
注 近畿={滋賀,京都,大阪,兵庫,奈良,和歌山}


[参考資料3]

出版・新聞・印刷業 2001年

従業者総数  東京都  大阪府  神奈川県
 新聞業   27,670   9,189   1,010
 出版業   62,050   6,518   1,204
 印刷業   108,391   47,293   14,940
(謄写印刷業を除く)



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