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『金融危機の背景を探る/金融工学の理論とその問題点』
架空の目次
2009年1月29日に開催された公開シンポジウム(中央大学企業研究所・金融学会関東部会共催)で配布した資料のひとつです。「金融危機の背景を探る/金融工学の理論とその問題点」を本格的に語るには、これくらいの主題を取り上げなければならないけれども、40分では到底すべては話しきれない。もし文書にまとめるなら、こんなものになるだろうとして「架空の目次」を示したものです。
2009年1月31日
(1)最初に
1.1金融工学悪者論と金融工学免罪論
どちらも正しくない。
野口悠紀夫『世界経済危機/日本の罪と罰』ダイヤモンド社、2008.12.11
1.2 金融経済の健全化のため
1.3金融工学を乗り越える学問が必要。
これは学問観の大きな変革を伴うものであろう。
個別問題を解くのでは不可能かも。
(2)金融工学とはどういう学問か
2.1.金融工学の簡単な歴史
2.2.金融商品の開発原理
2.3.金融工学が引き起こした事件
@ドレクセル・バーナム・ランバート事件
Aロングターム・キャピタル・マネジメント事件
Bエンロン事件
Cサブプライム問題
DCDS問題
(3)金融工学の問題点
3.1独立の仮定
個別リスクvs.システミック・リスク、市場リスク
3.2正規分布という仮定
3.3無限小行為者の仮定
市場が存在し、市場価格で好きなだけ取引できる(自分はprice takerである)。
取引数量の大小による市場の変動・危険度の違いを理論化できない。
3.4市場理論の不在
☆市場リスクをいうなら、その解明に当たるべし☆
(4)独立の仮定
4.1確率論の基本的前提
4.2サブプライムRMBS(/およびそれらを複合したABS-CDO)の場合
仕組み債(優良トランシュを切り分ける手法)
「独立の仮定」はどう使われるのか
独立でないならば
4.3格付けの実態
シミュレーション
4.4CDSの価格付け
サブプライムと違い、価格付けられていた。
正常時には「割りのいい投資」(野口悠紀夫p.83)。
いつ異常事態が発生するか分からない。正しい価格は算定できない。
算定に入れれば、高くて売れない。
(5)正規分布とウィーナ過程
4.1正規分布はなぜ頻繁に観察されるのか
4.2正規分布を前提にした金融数学
ブラック・ショールズ式 VATは?
4.3「厚い裾野」という問題(テール・リスク)
Black Monday, 2008年の異常値、推測誤差
4.4中庸国と極端国
Talebの本"Black Swan" 2007年の全米ビジネス書第1位=>前提を変える必要
4.5新しい可能性
経済物理学、レビ過程、GARCH過程
冪分布、普遍性と繰り込み
(6)無限小行為者の仮定
6.1無限小行為者の仮定
あるいは価格受容者の仮定 LTCMとENRON
6.2レバリッジの上限を決める理論
じつはない。何倍でも 市場崩落まで安全?
(7)市場理論の不在
7.1効率市場仮説
7.2金融工学の市場像
金融工学の立場:市場そのものは、自然現象。介入できないし、解明しない。
市場内部の逸脱増幅作用を無視している。=>市場理論の欠如
定常系としか仮定できない。
7.3金融市場の理論
Minskyの金融市場不安定論
信用市場に潜む逸脱増幅機構(群集行動、同機化、相転移)=>行動経済学
流動性の危機はその一例
7.4内部機構の存在証明?
ARCH(R. Engel)などの考察
7.5報酬体系の問題
7.6金融市場の経済学
構築の必要 金融工学を批判的に理解できる人材
=>「金融経済の新しい研究教育センターを作れ」
(8)市場主義のパラダイム
8.1「効率市場パラダイム」(de Louwe)
経済の金融化を先導したパラダイム
規制と介入より、市場を信ずる。正常時に加速した「うぬぼれ」
8.2仮説からパラダイムへ
効率市場仮説>>確認された内容を大幅に逸脱してイデオロギー化
8.3背後を支えた一般均衡理論
8.4「新しいマクロ経済学」とは
(9)どうすべきか
9.1規制強化だけでよいか
9.2金融経済の研究教育センター
9.4当面の政策/対症療法としてのケインズ政策
9.5経済の持続的成長政策
9.6経済学の革新
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