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U-Mart研究会 1月合宿 2007.1.6

国際貿易理論の新構成

塩沢由典

(1)U-Mart新春合宿2006の報告

失敗談
中間財が入った場合の目処が付かない。

労働投入のみの場合に、強い分担的特化が生ずるという十分条件
必要条件はJones1962
なんとか出来たが、よく調べたら証明に誤り。

グラフによる図解の紹介


(2)今回の報告

大きな進歩
・中間財投入があるM国N財で技術選択のある場合の一般理論
・定理 分担的特化の二つの存在定理 弱い存在定理、強い存在定理
・生産可能集合、生産可能フロンティア(極大境界)の特性
・生産面と賃金率・価格面との双対的対応関係


(3)学説史的には

○リカード理論は1960年始めで理論が停滞
ひとつの突破口に。

○貿易理論
Ricardo理論 vs. Heckscher-Ohlin-Samuelsonの理論(HOS理論)、特殊要素理論
Krugman以降>>産業内貿易、フラグメンテーション、アウトソーシング

○Ricardo理論:
伝統的 2国2財、技術がことなる、労働投入のみ
拡張  2国N財  N国2財
  3国3財 数値例、図解(池間誠)
今回の結果 中間財投入があるM国N財で技術選択のある場合


(4)理論的な意義

@HOS理論 物理量としての資本を仮定 批判>>価格理論の前提としてよいか。
Cf.1960年代の資本論争

A技術の重要性
HOS理論では、貿易を決めるもっとも重要な要因は、資源の賦存比率

B国際的な賃金率格差の説明
国際価値論とよんでいる理由

C国際貿易が入っても、Ricardo-Sraffa的経済観が維持できる。


(5)Ricardo貿易理論の計算論的側面

賃金率Δ(w1,w2,...,wN>=0, w1+w2+...+wN=1)のモード分割
実例は、第3図あるいはProjectorで。

@興味のひとつ 強い分担的特化パタンはいくつあるか。
M=2,N=2はひとつしかない。
M=3,N=3の場合、3つのパタンをもつものは存在する。4つは?
M=4,N=4の場合、5つのパタンをもつものが存在する。(9千例以上調べて、12時間以上)
M=5,N=5の場合、6つのパタンをもつものが存在する。(3千例以上調べて、5時間)

これは、本当に重要な事実か。

Aモード分割の内部頂点
・モード分割の双対性により、賃金率Δの頂点には生産フロンティアの面(facet)が対応する。
・現実にも、賃金率Δの頂点を求めて、そこで競争モードを定め、生産フロンティアの面を計算する。(現在わかっているアルゴリズム)

B賃金率Δのモード分割
なにをやっているか>>可能な特化パタンのそれぞれにおいてw1,w2,...,wNに関する線形不等式系を作り、解が存在するかどうか調べる。
w1,w2,...,wN>=0, w1+w2+...+wN=1, A(π)p=I(π)w, A(!π)p
Cパタンの数
☆N!
例:N=3  1・2・3=6
N=4 1・2・3・4=24
N=5 1・2・3・4・5=120
N=10 10!=3,628,800
☆線形不等式の解の計算
ひとつの解>>線形計画法>>たしかO(N^3・M^3)

D多面体(凸多面体)
2つの表示方式
H表示 有限個の半空間の共通部分で、有界なもの
V表示 有限個の頂点で張られる凸集合
H表示とV表示の転換は、多項式時間ではできない(と予想されている)。

E課題1 計算上
・3国・3財を超える図解法は?
・実際的な解法、なるべく速い解法
・数値的に解けなくても、解の性質は調べられる?>>数学

F課題2 経済学上
・大国と小国
・技術進歩の影響 とくに賃金率に
・現実データによる考察(3国N財)




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