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仮想取引で株お勉強
研究プロジェクト「U-Mart」 大阪市大など立ち上げ 来年には一般参加も
産経新聞2000.5.20夕刊(大阪本社発行版)
架空の株の先物取引をする市場をコンピューター上で作り、インターネットを通じてバーチャルな取引をしながら金融システムを研究する「U-Mart」研究プロジェクトが二十日までに、大阪市立大学経済学部の塩沢由典教授らを中心に立ち上げられた。来年早々には一般市民にも参加を呼びかけ、本格的にスタートする。インターネットを使った市民参加型の架空のバーチャル市場は全国初の試み。激しく揺れ動く国際金融市場を安定させる手だてを、研究者と市民が一緒に考える場所になりそう。
U-Martは大阪市立大、京都大、東京工業大、筑波大など全国十二大学の経済学部、工学部の研究者が共同で開発。あくまで架空の市場で、実際にお金をもうけたりはできない。市民が金融についての知識と技術の水準をアップさせ、腕を磨くことが目的だ。
まず、現存する株価指数のひとつの一ヶ月後の値段を予想し、「先物取引」する市場をコンピューター上に形成。参加者は、U-Mart用にプログラムした計算ソフトを使って、自分のパソコンからこの市場に入る。
それぞれの「顧客」には最初にコンピューター上の口座に架空の十億円が与えられ、参加者は一枚から千枚まで注文が出せる。
実際の市場と同様、売買の注文に応じて株価が決定。何度でも売り買いができ、空売り、空買いもOK。売買の判断は自分で考えても、コンピューターに強い人は自分で取引プログラムを組んで参加してもいい。
架空の市場でも、顧客の行動が価格を形成し、現実の市場と同じ複雑さを十分に再現できるという。
「市場は、人間の心理などいろんな要素がからんで形成される。そういう複雑なシステムそのものを研究し、市場の乱高下やバブルを回避する制度の設計などを考えるのが目的」と塩沢教授。一ヶ月ごとに取引の成果を計算し、参加者の利得に応じてランキング。優秀な成果を収めた人には情報を公開してもらい、知的財産として共有する。
塩沢教授は「もうかりそうなプログラムの開発や戦略の勉強が目的ではない。実験を通じて、将来的に市場の安定に反映させるのが狙い。市民層の金融についての知識水準のアップが、日本経済の国際競争力になる」と話している。
U-Martに関するホームページは「http://www.u-mart.econ.kyoto-u.ac.jp/」
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