日本経済入門・講義概要
塩 沢 由 典
A)講義の主題と目標
日本経済入門は、学生諸君に経済と経済学への興味をもってもらうことを主目標とし、毎日の新聞やテレビで取り上げられているような、なるべく身近でホットな話題をとりあげます。話題ごとに、現状と問題点を紹介し、ついでその背景や歴史を説明します。また、機会のあるごとに、分析に必要な理論について触れ、経済学への本格的な入門の橋渡しとします。
日本は、現在、長い構造的な不況の末期にあります。なぜ日本経済は、長い不況から脱出できないのか。1980年代までアメリカ合衆国をしのぐと言われるほど元気だった日本経済は、どうなってしまったのか。なにが問題で、なにが必要なのか。日本経済は、こうした緊急の問題をかかえており、それを巡って新聞・雑誌やテレビなどで、盛んな論議が行われています。この講義は、このような「現在の話題」を取り上げます。
日本経済は、世界、とくにアメリカ合衆国や東アジアの経済との関連を見ずに考えることはできません。1997年のアジア金融危機やそこからの立ち直り過程なども、折に触れて取り上げてみたいと考えています。
経済の混迷が続く中で、経済学そのものに対する社会の幻滅や批判も高まっています。既存の経済理論を鵜呑みにして、それで現実が分かるわけではありません。しかし、なんの理論も勉強せずに、複雑な経済問題に立ち向かうことはできません。その意味では、いま、経済も経済学も、たいへんな試練の時にあります。しかし、学習者・研究者の立場からは、これはたいへん良い機会であるとも考えられます。講義は、きっかけにすぎません。そこで取り上げられた話題を種に、みなさんが自分で雑誌や新聞を読み、自分で考え、また仲間と議論して、経済と経済学に取りくむことを希望します。
日本経済入門は、新入一回生にむけて開講される、経済学への入門科目のひとつです。おなじ入門科目である国際経済入門、経済史入門、国民経済計算体系入門と同時並行的に受講することが望まれます。
入門科目の目標は、現実経済への関心を経済理論の学習へと結びつけることにあります。この講義をきっかけにして、経済学に主体的に取り組んでもらうための「イントロダクション」です。経済理論の体系的学習のためには、基礎科目が用意されています。政治経済学1・2・3、近代経済学(ミクロ)1・2・3、近代経済学(マクロ)1・2・3をしっかり修得してください。さまざまな応用科目の履修によってばひろい経済知識を身につけることも重要です。
B)講義方法
教科書の対応する章を事前に読んでくることを前提にし、わたしの立場からの問題の再整理をおこない、現実の把握に努めます。問題を考えるにあたって必要な理論についても簡単に説明し、現在行われている議論にも触れつつ、経済学の分析のおもしろさを実感してもらえるよう努力します。
効果的な学習のためには、教科書を事前に十分読んでおくことが必要です。また、新聞や雑誌を追いかけることも重要です。とくに経済系週刊誌には、その時どきの重要な話題が特集されるので、講義時間中に紹介します。それらを積極的に読み解いてください。
C)成績評価法
試験の結果を重視しますが、質問・レポート等、講義への参加・貢献をも評価します。
D)講義計画
教科書に従って、各回、1章づつをとりあげます。取り上げる順序はかならずしも教科書通りにはなりません。なるべく、その週のホットな話題に引き付けて議論したいので、次週にどの章を取り上げるのか、毎回の講義の最後に予告します。適当な章のない場合は、雑誌の特集号などを事前に読んでおくよう要請します。
E)教材
教科書
日本経済新聞社編『ゼミナール 日本経済入門』日本経済新聞社。
新改定の2001年版が出ると思われるので、新しい版を購入してください。
参考書
講義のつど紹介される雑誌が参考書です。毎週、すくなくとも、一冊ぐらいの経済誌を買って読む癖をつけることが大切です。
以下に、書店などで注目すべき雑誌を掲げておきます。本屋さんの店頭で、かならず毎週、各誌がどんなテーマを取り上げているか、どんな論文が書かれているか、確かめてください。また、毎週、1〜2時間は、学術情報センターで、これら雑誌と取り組んでください。
『週刊ダイヤモンド』、『エコノミスト』、『週刊東洋経済』、『経済セミナー』、 『世界』など。
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