日本経済入門・Q&A

塩 沢 由 典




前回の講義範囲内だった教科書の範囲で判らない所がありました。暇あれば教えて下さい。なかったらこの本見れば判るよ〜的な事だけでもOKです。

といった質問がいくつかきています。時間がゆるすがきりで、なるべくここで答えていきます。

以下は、質問時間に答えられなかった質問の解答です。TAの後藤先生が書いてくれました。

リカードの「比較生産費説」の解説

各表で使われている単位について。 2部

このホームページの「特別講義 比較生産費説」を参照して下さい。[両国の賃金率] の部分までは、質問受け付け時に解説しました。その続きの[労働者にとっての利益] の部分の表の数値の解説をします。この表の中の数値は、「労働者一人が働いて得ることの出来る、その商品の量」を表 します。

例えば、「貿易なし」のイギリスを考えます。

まず、一番最初の[リカード の数値例]の表を見て下さい。

イギリスではラシャを1単位生産するのに必要な労働者 の数は100人でしたね。100人が働いて1のラシャを得るのですから、労働者一人当たりに得ることの出来るラシャは、1/100になります。分数のままでは扱いにくいので 、1000を掛けて表示します。つまり、1000分の1単位の生産を考えるということです 。そうすると、10になって、「イギリスの労働者一人が働いて得ることの出来る、ラシャの量」は10になるわけです。これが、[労働者にとっての利益]の部分の表の数値となるわけです。

まったく同じように、イギリスではぶどう酒を1単位生産するのに必要な労働者の数は120でしたね。ですから、1/120に1000を掛けて、8.3になります。

貿易時には、イギリスでは200人がラシャの生産を行って、1単位ずつのラシャとぶどう酒を得るのでしたね。ですから、100人がラシャを作って、100人がぶどう酒を作ってそれぞれ1単位ずつ得るのと、同じ結果になるわけです。そうすると表を見れば明らかなように、貿易なしのときと比べて貿易時では、ラシャは変わりませんが、ぶどう酒は1.7多く得ることが出来るわけです。

フローとストックの解説の補足

(教科書133ページ) 1部

フローは商品の流れの量で、ストックは資産の量といった解説をしましたが、噛み砕いて説明することによって、余計に分かりにくくしていたかも知れません。そこでもう一度、解説します。

フローとストックとは、経済の量の測定の仕方です。測定の仕方、見る方法がこの両者によって異なるわけです。フローとは、一定期間内における財や貨幣の流れの量として計測される概念のことです。我々の所得や投資や消費の量がフローです。お金や商品の動きの量を表すのが消費量や所得額になるのです。「動」です。

ストックとは任意の一時点に存在する財や貨幣の量です。資産などがこれにあたります。「静」ですね。

第4回の範囲の教科書のページにあった"大企業の合併、提携には危険もある"で、誰かに聞いたのを思いだしたのですが、(授業には関係ないのですが)合併した"三井住友銀行"はどうして"住友"の方が強いのに、名前は"三井"の方が先にくるのですか。素朴な疑問ですみません。

「武士の情け」ではないでしょうか。簡単に言えば、三井系が併合される。これからも大変な社内事情が待っている。せめて形の上だけは、「対等合併」と見せておきたい。それは三井系の社員の今後の士気にも響きます。
銀行が合併したとき、劣勢の銀行が名前の上にくるということは、かつてもあります。東京三菱銀行、中央三井信託銀行、古い例でもうなくなってしまった太陽神戸銀行など。第一勧業銀行の生まれたときは、どうだったのでしょうか。

経済用語辞典を買おうと想っているんですが、色々あってどれがいいか分かりません 。何か推薦して下さい。

わたしは最近、あまり使っていないので、どれがいいか指摘しかねます。
どれが自分に合うか、本屋さんにいって、ひとつの語句でどう説明が変わるか、いろいろな辞典にあたってみるのが一番です。

ゼミナール日本経済入門の章末問題をやって、自分の答えを見てもらいたいんですが 、メールで送るのと、授業の後にもって行くのどちらがいいですか?

簡単な質問は、授業の後にしてください。一般的な意味を持っていると思われるもの(つまりみなが疑問に思いそうな質問)については、メールでいただければ返事を書きます。

ただし、わたしには、章末問題までは、忙しくて手が出ません。
ただ、こうした希望が多いなら、教務アシスタントにたのむという手はあります。
検討してみます。ほかの人で同じような要望の人がいますか。

教科書P130の下の段2行目からの「日本経済では円高になっても値下 げを渋り、円高差益を懐にする風潮が強かったといえる。」というところ。なんで 値下げを渋ったんですか?というか円高差益ってなんですか?この一文が読んでてよう判りませんでした。

円高というのは、100円でよりおおくドルが買えるということですね。そうすると、同じお金(円)でよりたくさんの商品が外国から買えます。つまり輸入品は安くなります。それを値下げせずに売れば、円高の御蔭で余分な利益がでます。それが円高差益です。値下げをしなかったのは、この際、円高に便乗して儲けようとしたのと、ゆりもどして円安になったとき、再度価格をあげるのが難しいからです。

二つ目は語句についてです。教科書P133の至るところにでてくるストック価格ってのと同ページ下段5行目にでてくる「資産価格」ってのは同じ意味ですか?

基本的にはおなじと考えてよいでしょう。ストックとして、在庫などを考え、資産には土地を考えるというようにひとによってなにを中心とかんがえるか違いますから、多少の意味の違いが出てくるときがあります。資産に対応する英語は、ふつう、アセットassetというます。

質問したかったことは以上です。あ、ついでにもう一ついいですか。前回先生おっしゃってましたが経済学ぶにはある程度の言葉知らなきゃだめなんですよね。私ほっとんで知りません。そんな子にお薦めの本何かあれば教えて下さい。以上です。

本よりなにより、まず、新聞を読む癖をつけてください。毎日読みつづければ、一年で、知らず知らずにほとんどの必要な言葉を覚えることができます。なんとも出てきて分からない言葉は、たとえば友達に聞くか、インターネットで調べるか、あるいは『経済用語辞典』で調べてください。始めて出てきたことばなど、一々調べる必要はありません。


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